本部船運営記。11月第10レースは“SIESTA”さんでした。
11月17日の第10レースは2013年クルーザーレース最終戦でした。年間総合優勝争いは9レース終了時点で僅差で並ぶ4艇に絞られており、“優勝”の行方はまだまだ混沌としています。このレース次第ということもあり各艇気合が入っています。
今日は西~西北西の風で、日中は30ノットオーバーの強風が吹くとの予報もあり、事故が無いように安全を最優先としたレース参加をお願いしました。無理をせず、勇気ある撤退も我々アマチュアヨット乗りには大事なことです。最終戦の本部艇は“SIESTA”さんです。優勝争いの上位4艇にいる同艇もレースに参加したいところでしょうが、今日は荒れ模様の海で本部艇を引き受けていただきました。ありがとうございました。
[以下は本部艇“SIESTA”号のK氏からのレポートです]
11月17日、2013年博多ヨットクラブ最終レースの本部艇受付準備のため8時40分にハーバーの2階へ行くと、すでにレース委員長がホワイトボードにレースコースを描き込んでおられた。博多湾口の「机島」を回るコースを設定しますが、時計回りにするか反時計回りにするかを話し合い反時計回りに決定。30ノット近くまで吹き上がる予報に、参加艇も湾を出たら波が厳しかろうと思いながら、能古島より沖に出ない私たちは淡々と受付の準備をする。9時からのエントリー受付をハーバーのマイクでアナウンスし受付準備を完了。10時の受け付け終了までに15艇がエントリーし、速やかに受付を撤収して本部艇準備チームと合流して慌しく10時20分近くに出航すると、セールをはためかせた参加艇が海苔ひびの向こうでウロウロしているのが見えた。
レース海面にたどり着いた私たちは、海苔ひびから少し離れた所に「アウターブイ」をレッコし、風向きと杯数を一応考えて本部艇投錨を行ない、時間は忘れたが無事にスタートライン設置を終えた。予定の11時スタートの10分前に再度本部艇マニュアルを読み、旗揚げやら時計係やらの役割分担を決め、リコール艇有りならまだしもゼネリコなんて勘弁と各々念じながら5分前を迎えるも、その後は案ずる暇もなかった。予定の11時にスタート信号を発すると、どんぴしゃりなスタートを決めた艇を先頭に次々と走り去って行くレース艇を、いろんなものが入り混じった気持で見送る。
強風の中、早々と先行組が毘沙門と象瀬のラインを越えて行くのを尻目に、渾身の力で抜錨しポンツーンへと戻る。そう、私たちにはご飯がなかった。大変便利だけど9時から開けて欲しいハーバー近くのスーパーへ買い出しに行き、またバタバタと出港して自分で打ったはずのアウターブイを探す。フィニッシュラインはこんな感じかなと、もはやどの辺りにいるか見当も付かない先頭艇を気に掛けながら投錨する。これでやっと飯の準備ができる。キャビンでビールを飲みながら「水餃子」の葱を刻んでいると、上から何やら声が聞こえる。ビールかと聞き返すと、どうも走錨しているようだ。鍋の火を消して上がると、なるほどアウターブイは遠くにあり、能古島が近くにある。沖にはかすかにゼネカーらしきものまで見えている。これはイカンとまた必死に抜錨してもとの場所近くまで戻り、先程よりロープを長めに錨泊する。ラインの再設定を終えて沖を見るとゼネカーは2枚になっていた。やれやれと船内に戻ると鍋がこぼれて、ビールは転がっている。軽く絶望しながらひたすら清掃に励み、また葱を刻む。
レース開始から1時間半が過ぎたころ、やにわに上が騒がしくなりホーンが聞こえた。大型艇の“Humming bird”がフィニッシュしたようだ。湯気とともにデッキへ首を出してみると、波間に気合いの入った後続艇が等間隔に並んでいる。下に降りて水餃子を皿に盛りながら、今度本部艇をするときはコンビニのおでんにしようと思った。真剣に。
結局、30ノットを超える強風と高い波に最後までダウンウインドセール(ジェネカー)を張ってフィニッシュラインを切ったのは、“Humming bird”さんと”May be”さん、“Bambino”さんの3艇でした。ガッツ!お見事です。