本部船運営記。7月第5レース・壱岐レース

2015年7月28日

7月第5レースは小戸沖から長崎県壱岐アイランドを目指す伝統の「壱岐レース」です。海の日の3連休、フィニッシュ後は透明度の高い海で海水浴もよし、現地で一泊して温泉に浸かるもよし、名物の「うにめし」や「壱岐焼酎」でグルメ三昧もよしと、たっぷり楽しめる島です。この30年近く午前0時をスタートとしていましたが(昨年は試験的に午前1時スタート)、ヨットオーナーやクルーの高年齢化に伴い、夜間レースの事故防止等を考慮した結果、今年はスタート後まもなく空が白んで来る午前4時をスタートとしました。またタイムリミットは同日の午後6時。壱岐までは直線で約30マイル、平均で2.2ノットの艇速でフィニッシュできる計算です。

DSC02151DSC02157スタートが午前4時ということもあり、前日の18日(土)に出艇申告(16:30~17:00)、艇長会議(17:00~17:30)を行い17艇がエントリーしました。スタート本部船はレース参加の「Humming bird Ⅴ」が務め全艇スタート後にアンカーを引き上げてレースに復帰です。この場合「所要時間-10分」の救済をすることにしています。また壱岐フィニッシュ本部船は山田会長の「JORDAN」が務めます。

フィニッシュ本部船

フィニッシュ本部船

スタート本部船

スタート本部船

台風11号の動向が気掛かりでしたが17日(木)には強風域も通り過ぎ、まずまずの天候の中でのレースとなりそうでほっと一安心。19日(日)午前2時過ぎ頃から各艇に人が集結し出港準備が始まりました。天気予報は曇り時々晴で、東寄りの風2~6ノット、波は0.5m。スタート本部船の「Humming bird Ⅴ」は目印としてストロボライトを2個連結してマストの高い位置に吊るして午前3時20分頃に出港してハーバー沖にアンカリング。リミットマークは設置せずにハーバー入口の入港灯(緑)と本部船をスタートラインとし、本部船を左に見てスタートです。ハーバーからは航海灯を点けた参加艇が続々と出港してきています。風はほとんどなく1ノット前後、海面は鏡のように滑らかです。もう少し風が吹いてくれないとスタートが混乱しそうです。夜間でもあるので何よりも衝突・接触しないこと、本部船のアンカーロープを引っ掛けないことが一番です。3:55に予告信号(長音一声とHYC旗掲揚)、3:56に準備信号(長音一声とP旗掲揚)、3:59スタート1分前(長音一声とP旗降下)、そして4:00ちょうどにスタート信号(長音一声とHYC旗降下)が発せられましたが、無風状態の中でほとんどのヨットが行き足がないまま漂っています。10分、20分、30分経っても位置関係が変わらず中には弱い潮の影響を受けてヨットハーバーの防波堤に近付いているヨットもあるようです。ときおりふわーっと1ノットほどの風が入り、その風をしっかり掴んでとにかく沖を目指します。

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4時45分くらいになると東の空が白んできて周りのレース艇の状況も分かってきました。40フィート級の大型艇も26フィートの小型艇もみんな近くにいます。スタートラインから100~200m位のところで仲良く漂っています。これは厳しい。こんなにも風がないことは珍しいことです。航海計器はいつ見ても風速0.0ノット、艇速0.0ノット。博多湾口まで6.5マイル、そこから壱岐まで23マイル、このような状況で果たしてフィニッシュラインまでたどり着けるのでしょうか、心配になってきました。今日の日の出時刻は5:21、東の空がだいぶ赤くなってきました。スタートから1時間20分経ってもヨットハーバーの目と鼻の先にある「能古島」にも達していません。雲の合間から黄金色の太陽が顔を覗かせ夜が明けましたが相変わらず風は吹いてきません。各艇は僅かなパフを拾おうと海面を見ながらコース引きをしています。その内に1ノット前後の東寄りの風を感じだしたのでジェネカーやスピンを上げて何とか前に進もうと努力しています。ふわーっと吹いては止まりの繰り返しながら、各艇じわじわと沖に向かって進みだし、7時半過ぎにようやくトップ艇の「Humming bird Ⅴ」が博多湾口の「机島」の横にたどり着きました。スタートしてから実に4時間、順風だと1時間も掛からない距離です。

無念のリタイア

無念のリタイア

スタート本部船の「Humming bird Ⅴ」は約50分遅れでレースに参加してトップに立ちましたが、まさかの艇体トラブルで無念のリタイア、機走でハーバーに戻って行きました。昨年の「タモリカップ」総合優勝艇ですので、修理を済ませて2連覇達成をお祈りしています。

やっとの思いで博多湾を抜け出したもののここでまたもや風が止まり、1時間ほど潮にもてあそばれて北寄りの2ノットほどの風が入りだし、西北西の方角にある目的地「壱岐」へコースを取ることができました。その後徐々に風も吹き出し、「烏帽子灯台」近くでは10ノットオーバーと安定し、フィニッシュ時には20ノット近い風の中をクローズドリーチで豪快にフィニッシュラインを切りました。一時はタイムリミットを気にしましたが結果としては途中リタイヤ5艇(うち1艇は艇体トラブル)を除きレース続行の12艇すべてが時間内にフィニッシュすることができました。皆さんなかなかしぶといですね。RIMG0087RIMG0035フィニッシュ地点の「筒城浜」は壱岐で最も有名な海水浴場、海の日の3連休で海水浴客も大勢繰り出していて、「バナナボート」も多数海面を走り回っていました。フィニッシュ前のレース艇の直前を横切るボートもいて、危険防止のために必要のないタックを強いられたヨットもいたようです。ボートの操縦者も少しは考えてよ!

1着MALOLO

1着MALOLO

2着May be

2着May be

3着METAXA

3着METAXA

4着Bambino

4着Bambino

 

 

 

 

 

 

5着Freestyle

5着Freestyle

6着ZEPHYRUS

6着ZEPHYRUS

7着翔 風

7着翔 風

8着SIESTA

8着SIESTA

9着Karakoram

9着Karakoram

10着Little Wing

10着Little Wing

11着Notari 3

11着Notari 3

12着Happy Holiday

12着Happy Holiday

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィニッシュ後、とんぼ返りで博多に帰る艇、壱岐の港に入って旅館や民宿で1泊する艇などそれぞれに壱岐レースを楽しまれました。

印通寺港

印通寺港

芦辺港

芦辺港

MALOLO、Freestyle、ZEPHYRUS、翔風、HIROは印通寺港に、Little Wingは七湊港に、METAXA、Bambino、SIESTA、JORDAN、いそしぎ、Karakoram、Notari 3、Happy Holidayは芦辺港に入り、それぞれ1泊して翌日博多に帰りました。

会員懇親会などで気心が知れあったMALOLO、METAXA(麻里絵との合同チーム)、Bambino、Freestyle、JORDAN、SIESTA、翔風、いそしぎ、ZEPHYRUSの10艇のオーナー、クルー総勢62名は壱岐湯本の海を見下ろす高台に建つ国民宿舎「壱岐島荘」に一緒に泊まり、天然温泉でレース(フィニッシュ本部船)の疲れを癒し、夜は大宴会で大いに交流を深めました(昨年は6艇、42名でした)。山田会長(JORDAN)の挨拶のあと熊坂レース副委員長(Freestyle)の発声で乾杯!しばらくして熊坂レース副委員長から壱岐レースの成績発表がありました。その後各艇ごとに艇名の由来やメンバーの紹介が続き、つい最近ご結婚されたSIESTAのS氏(奥様同伴)を前に引っ張り出してやんやの喝采。すると同じSIESTAのY氏もクルー同士でご結婚されていて4歳のお嬢ちゃんともどもみんなで拍手喝采。JORDAN艇にはゲストでカナダから来福中のサンディーご夫妻(奥様は香港出身)が参加されていて紹介。HYCもなかなか国際色豊かですね。壱岐焼酎(実は麦焼酎の発祥地は壱岐なのです)が凄い勢いで消費されて酔いが回るとともに宴席もヒートアップ、芸達者なMALOLOチームの若手による宴会芸に皆さん腹を抱えて大笑い。Bambinoのオーストラリア人クルー、ミッチさんのカラオケも飛び出すなど、壱岐の夜は更けてゆく ...最後は博多祇園山笠60年以上のキャリアを持つ黒住副会長(SIESTA)の「博多手一本」でお開きになりました。飲み足りない皆さんは部屋に戻って酒宴が続いたようです。

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翌日は7時から各艇朝食を済ませ、宿のマイクロバスで係留地の芦辺港、印通寺港に送っていただき、帰りの食糧・飲料・氷とお土産を買い込んで博多に向けて出港しました。芦辺港の係留場所のすぐ近くには「ダイエー壱岐店」が、印通寺港の係留場所もすぐ近くに大きなショッピングセンター「マリンパル壱岐」がありとても便利でした。20%のプレミアム付の長崎県離島限定の地域通貨「しまとく通貨」を到着時にフェリーターミナル内の観光案内所で買い込んで、宿代やお土産等にしっかり利用させていただきました。本当にお得でした。残念ながらこの制度は3年間の限定で、今年が最終年です。

[以下はスタート本部船“Humming bird Ⅴ” S氏のレポート]

スタートラインは、04:42分頃に最終艇の「Notari 3」をスタートさせ、その後セールを上げエンジンを切って、スタートしたのが04:47分でした。

今後の課題としては、スタートラインの時間ですが、通常4分、鳥羽レースみたいなロングでも10分で撤去され、遅い艇はDNSとなります。今回の場合、半分以上の艇がDNSになってしまう可能性がありました。暗い中でのスタートで、風待ちさせる判断は出せませんでした。また、ラインですが、風のことを考えるともっと沖が良かったのですが、ハーバー入港灯との見通しの為、本部船の位置を南に下げると大型艇の座礁の危険があり、北に上げると本部船有利となってしまいすぎ、また、本部船のアンカーラインに絡む危険もあるため、ちょっと長かったのですがぎりぎりのところでのアンカーリングとなってしまいました。今回、最後尾からのスタートは、トップ艇集団の動きを見て有利なコースを引くことができ展開は楽でした。お疲れ様でした。

[以下はフィニッシュ本部船“JORDAN” Yオーナーのレポート]

レース当日の7月19日(日)午前0時30分、壱岐に向けて小戸ヨットハーバー出港。北東の空にカシオペア座が輝いて見える。台風11号の余波で多少うねりがあるものの北西の風3ノット、真上りのため機走にて博多湾外へ。机島通過後やや西へ変針するも風が止まりセールも上げられず取りあえず機走で壱岐島へ向かう。真っ暗な玄界灘で大きなうねりとエンジンの単調な響きで睡魔が襲う。あー、いかんいかん、レースでなかったらこんなにも緊張感がないものか。6ノットの機走とうねりのサイクルが合わず約2名が「まぐろ」に、玄界灘に撒き餌をすることになった。撒き餌と波切りに輝く「夜光虫」が美しい。

IMG_7754午前3時頃「烏帽子灯台」を過ぎる頃から南西の風13ノット吹き始め、総員(8名)起床しセールオン。艇の挙動も安定し「まぐろ2名」もゴソゴソと何か食べ始めている。難所「名島」の南を通過する頃には東の空が白み始めGPSだよりのセーリングから視認セーリングへ、ほっとひと安心。午前5時30分にフィニッシュ地点に無事到着しアンカリング。先ずは朝食。持参のおにぎりと船上でのJORDAN特製バイキングサンドイッチ。食パンを好みの厚さに切りバター、キュウリ、レタス、ソーセージ、トマト他好みの食材をたっぷり挟んで最後に辛子マヨネーズを絞り出して笑顔で“いただきまーす”。同乗のカナダ友人持参のナイアガラワインで乾杯。友と潮風に包まれて人生至福の時を味わう、博多ヨットクラブ万歳!満腹感と酔いとオーバーナイトの疲れとともに、血圧、健康診断、年金、親の介護、孫自慢、ツラツラと熟年セーラーの会話が盛り上がるうちにトップ艇からの「フィニッシュまで3マイル」の無線コール。南東方面から突進してくるトップ艇「MALOLO」と東海面からトップスピードの「May be」のフィニッシュ前のデッドヒートが面白い。その後レース艇が順次フィニッシュ。ヨットはどこから見ても絵になるしセクシーです。17艇エントリー中5艇がリタイア、完走12艇。スタート時点での無風、超微風状態を聞いていたので16時過ぎにレース続行の12艇が無事フィニッシュできてよかったです。シングルハンドの「Notari 3」と「Happy Holiday」のフィニッシュ前のバトルもかっこよかったね。おまけに修正で1位と2位、風が無い時の粘りと頑張りに敬服。


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